天然資源:
植生  野生動物  気象と気候 

植生
本実験林は北回帰線の北側に位置し、管轄区内における海抜の高低差は3,700メートルで、地形は非常に複雑である。多彩な生物資源が豊富に育ち、亜熱帯、暖温帯、冷温帯、亜寒帯、寒帯における各種森林植物が垂直分布し、まさに台湾の森林の縮図であり、また、東南アジア諸国における随一の、森林研究、教育、実習の絶絶好の場でもある。本実験林の面積は32,765.83ヘクタール、管轄区内における天然植生についての概述は下記の通りである。

植生
1. ガジュマル-タブノキ林帯 (Ficus-Machilus Zone):
海抜500メートル以下の場所に分布しており、亜熱帯林である。早期に人類と接触した結果、生息地は、経済目的の竹林、果樹園、その他の農耕地に変えられたため、現在では、渓谷、絶壁もしくは粗放経営の大規模マチク(麻竹)内でのみ、少数ではあるが、尚も他の天然樹種が存在している。
» 神木渓保護林の林相
2. タブノキ-シイノキ林帯 (Machilus-Castanopsis Zone):
海抜500~1,500メートルの場所に分布しており、本実験林管轄区内にある渓頭鳳凰山区と和杜沙里仙の一部地区、及び29、31林班の保護林地区に分布している。森林の様相はほぼ完全なものと言え、本林帯内の樹種は相当豊富で、クスノキ科と殻斗科が大部分を占める。
3. コナラ林帯 (Quercus Zone):
タブノキ-シイノキ林帯の上部に位置し、1,500~2,500メートルの間に分布する。本実験林の22、24、25、27、30林班内に包括され、海抜が上昇するに従い、クスノキ科の植物は減少し、殻斗科の植物が徐々に増加する。構成植物としては広葉樹が最もよく生育しており、針葉樹は紅檜、台湾杉、台湾五葉松等の老齢樹だけが存在している。
4. ツガ-エゾマツ林帯 (Tsuga-Picea Zone):
本管轄区の塔塔加鞍部地区2,300~3,000メートルの場所にあり、広大なツガ、エゾマツが生息している。ここの森林はほとんどがこの2種類の針葉樹からなる純林で、台湾華山松、台湾二葉松、紅檜、台湾扁柏などの樹木も生育している。この外側には広葉樹のヤマグルマ、ツバキ、玉山薔薇、高山ブナが見られ、玉山箭竹(ニイタカヤダケ)、高山芒等も群生する。
» 塔塔加天然雲杉林帶
5. ツガ林帯 (Abies Zone):
海抜3,000メートル以上にある玉山地区内にあり、広大なタイワンツガが見られ、しばしば純林を成している。林の下には台湾スグリ等の低い潅木が生息している。
» 塔塔加鉄杉
6. 高山植生帯 (Alpine Vegetation Zone):
玉山主峰、北峰、南玉山に分布しており、ツガ林の上からツンドラまで分布している。主となる樹種は玉山圓柏である。風の影響を受ける場所にある玉山圓柏はほふくする潅木状になっており、風の影響を受けない尾根もしくはカール状の谷では喬木を成していて、壮観な様子を見せる。一緒に生えている小さな潅木には、玉山小檗(メギ科)、タイワンビャクシン、玉山つつじ、などがある。



野生動物
本実験林は広大な面積の保安林、天然林、保護林を有しているため、台湾の数少ない野生動物が生息できる原野の一つになっている。現在、今なお見ることができる野生動物の種類は多く、その中で棲息、もしくは本実験林の境界を越えてやってくる鳥類は108種類を超えている。比較的に有名なのは、サンケイ、ミカドキジ、ヤブドリ、カンムリチメドリ、などである。哺乳類の例を挙げると、タイワンカモシカ、キョン、ムササビ、タイワンザル、などで、いずれも本管轄内で見ることができる。これまでの調査では、下記の表に示している種類数が見られることが分かった。

台湾大学実験林管轄区の動物種類数調査結果
種類 種類数 台湾固有種 /準個有種
 哺乳類 20 7
 鳥類 108 45
 爬虫類 32 6
 両生類 18 7
 魚類 18 1
 蝶類 157 15
情報源:1.参考文献;2.第九期経営計画動物資源調査資料


気象と気候
管轄区内の地勢は非常に複雑で、山脈は蛇行が続き、山々が起伏して連なっている。海抜の高低差が約3,700メートルあるため、気候の差も激しい。気候形態は海抜の高度に従って次第に上昇し、亜熱帯、暖温帯、冷温帯、亜寒帯、寒帯の5種の気候帯が存在している。本実験林管轄区内では、現在、気象観測を行う気象ステーションが合計6ヵ所ある。竹山ステーション、渓頭ステーション、清水ステーション、水里ステーション、内茅ステーション、和社ステーションである。

降雨量は治山治水作業に重大な影響を与える要因となるため、各林業排水工事、野渓が作成する横断面設計は全て長期的な雨量観測資料に頼らなければならなく、気象観測は流失量を推測する根拠ともなるわけである。本実験林は、流失の観測を行うために、1987年に渓頭鳳凰の集水区に量水堰堤を1ヵ所設置した。本実験林内の主な降雨形態は、「台風もしくは熱帯性低気圧による雨」、「梅雨」、「熱雷」、「集中豪雨」の4つに分類することができ、前の3種類の雨は5~9月に集中し、これは本実験林の雨季に当たる。この時期の雨量は年間雨量の76%以上を占め、特に台風もしくは熱帯性低気圧による雨は、非常に激しいものである。

最近の気象記録によると、年間の平均気温は4℃~23℃、一般的に1、2月の気温が最も低く、逆に7、8月が最も高い。管轄区内の年間平均降雨量は約2,500㎜であり、雨量は比較的に豊富だと言える。年間を通しての降雨形態に基づくと、乾季 (10月~翌年4月)と雨季は(5月~9月)に分けられる。